杉本煉瓦製造所

甲賀郡寺庄村大字葛木(かづらき)に所在した煉瓦工場。『滋賀県統計全書』明治30年版に現れるのみの工場だが、明治21年1月創業とあり、その所在地からして関西鉄道の草津線建設に関連して興った工場とみられる。実際草津線の国分暗渠新道暗渠には「甲賀/杉本/葛木」の文字を有する刻印煉瓦が使用されており(三雲~柘植間は明治23年2月開業)、それ以外の構造物にも質感の似た煉瓦が幅広く用いられている。

葛木にある西光寺の壁は杉本煉瓦が寄進したものと伝わっており(同寺奥方談)、ここには普通煉瓦だけでなく3インチ系の肉厚煉瓦も多数用いられている。杉本煉瓦がM30版統計書に掲載されていることを考えると東海道線複線化に際して再び煉瓦を製造し、その余剰煉瓦を寄進して築いたものとみられる。この壁の煉瓦は重ね焼きの跡は少なく、かわりに常滑焼様の赤い発色をしたものが目につく。また胎土には赤みの強い白斑を有し、長石系の白色石粒に加え同じくらいの大きさの黒褐色の石粒も同程度含むのが特徴的。西光寺壁のものは黒色粒がさほど目立たないが、製造時期が異なるため原土も若干異なっているのかも知れない。なお同工場は普段は瓦を製造していて、戦後もしばらく瓦製造を続けていたそうである。

このほか葛木では12ft用Bに類似する撥形異形煉瓦(肉厚)なども検出されている。数は少なかっただろうが井筒用煉瓦の製造も行なっていたようだ。

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