JR奈良線木津川橋梁下に転じている井筒瓦礫より。おそらく12ft円形井筒で、Aに相当する外側扇形、B相当の撥形異形に確認できる。やや細いものや同程度の大きさで太く雑な形のものなどあり。
撥型の形状は9ft Dに類似した手元窄まりのタイプ。この形状は木津川橋梁井筒のすべての煉瓦に言え、これは夢前川橋梁”ロ三三”など山陽鉄道の井筒の撥形にも一致する。太田川橋梁の複線部に使われていたとみられる無刻印撥形異形も同じ形状である。
面白いことに、外側扇形と内側扇形の形状は同じで(12ft/9ft C)、要するに扇形一種撥形一種で構築していたらしい。そうなると煉瓦形状を明示する刻印は必要なくなり、事実木津川橋梁の異形煉瓦には計上指示印とみられる刻印は検出されなかった。合理的といえば合理的だが単なる手抜きであったのかも知れぬ。木津川橋梁の供用開始(M29.3.13)の後に鉄道局M29規格が布達されているのを考えると、その頃井筒の築造が雑に行なわれる傾向があったために風紀矯正の目的でこの達を出したという見方もできる(それ以降の官設鉄道の井筒は達どおり3種の異形煉瓦で築造されている。例:上十三川橋梁瓦礫)。
なお木津川橋梁の異形煉瓦は65mm前後を測り、2-1/2インチ厚規格を採用していたものとみられる。ありそうでなかった厚である。