琵琶湖疏水 ”ソ+漢数字”(含・〝カ+漢数字〟)

第三隧道呑口前の作業場跡(坑口向かって右手の藪の中に煉瓦断片が多数転がっている)や第三隧道吐口のポータル壁裏、安朱川橋梁などに見られる刻印。漢数字は二桁で「一二」や「二九」が見つかっている。安朱川橋梁では普通厚の煉瓦の平や長手に、第三隧道のものは厚70mm強の肉厚煉瓦の小口or長手に打刻されている。作業場跡で採取したものは微細な金雲母を多く含み、これは〝□+疏〟印〝小判型+疏〟にも見られる特徴なので、琵琶湖疏水工場で製造されたものとみてよいと思う。

安朱川橋梁では〝ソ+漢数字〟印によく似た形態の〝カ+漢数字〟印煉瓦も使われている。東雲新聞明治21年9月22日号に膳所監獄が琵琶湖疏水工事に煉瓦を供給したとする新聞記事があり、あるいは膳所監獄製(カンゴクの〝カ〟?)である可能性も考えられたが、もともと疏水煉瓦工場は囚人労働で労働力が賄われており、M21.2.28には北工場を監獄に委したという記録もあるので(『琵琶湖疏水要誌 訂2版』巻末年表)、その絡みで疏水煉瓦工場で使用されたものと考えたほうがよさそうである。安朱川橋梁の二種の刻印煉瓦は焼き色も形状もよく似ている。(故にこのカテゴリには〝カ+漢数字〟も含めている。ただし安朱川橋梁はM20.12.25竣工とされるので工場の監獄への委託よりも前にできあがっている)

なお、疏水煉瓦工場では7寸3分×3寸5分5厘x2寸という寸法を基本形とし、他に厚1.8寸と2寸5分のものが若干あったとされる(例えば『京都都市計画 第1編』など)。このうち厚2.5寸のものが先述第三隧道の〝ソ〟煉瓦で、安朱川橋梁などに使われている普通厚の煉瓦(〝□+疏〟を含む、疏水構造物に普遍的に見られる煉瓦)が厚2寸のものと見られる。後者は実測では平均56~57mmを測るが、疏水煉瓦は全般的に縁辺が焼き縮んでいて平中央付近が数ミリ厚いことが多い。2寸を最大値として選別されているためにこのような結果になってしまうものと思われる。1.8寸のものは疏水工事最初期に採用された川島煉瓦製品が該当するようである。


「 琵琶湖疏水 ソ」カテゴリーアーカイブ

WP Twitter Auto Publish Powered By : XYZScripts.com