外見はまったく手成形煉瓦のようだが、断面に白斑はみられず、成形過程を想像することができない。機械成形で切り出した煉瓦を手で再整形したのかも知れない。強く赤く発色した基土に数ミリ径の石英・長石の粒を含み、白斑はほとんど見られないのは岸和田煉瓦の胎土でよく見られるように思われる。白斑を有するものもあるが、添印を有していたり焼きが甘かったりしていて、岸和田煉瓦の本工場で作られたものではなく分工場の製品であるのかも知れない。
該煉瓦は京都市の夷川発電所付近で歩道の舗石に用いられていたもので(たまたま撤去工事に行き合わせ譲っていただいた)、琵琶湖第二疎水の完成後に持ち込まれたものと見られる。明治末~大正初期の製品か。