西尾士族生産所 英字形状指示

西尾士族工場が東海道線工事に納入し始めた頃には”エー”、”ビー”、”シー”等のカナ表記の形状指示印を用いていたが、末期にはアルファベット表記の形状指示印も使用していたらしく、西尾市街やその周辺地域では西尾士族工場の識別印が押された英字形状指示印煉瓦が検出されている。『西尾市史』第4巻p.133に掲げられた「明治20年10,11月棚揚げ」表にも “上等イー形”、”エー形白地” 等のカナ表記の異形煉瓦と並んで ”(上等)ABC形” 煉瓦が計上されている。これが該英字形状指示印の煉瓦と考えられる。価格は1000個につき6.00円で、並形(同4.00円)と上等イー形(同8.15円)の中間に設定されている。

縦横約4cmほどの大ぶりの印で、各字の書体に共通点はない(この時代のアルファベット書体の印はどれもこのような不統一傾向がある)。”A”は棒状の部材を3つ組み合わせたような素朴なシルエット。”B”はごくノーマルな太いセリフ書体。”C”は西尾製かどうか確証が乏しいが丸みの強いゴシック体。

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