琵琶湖疏水 ”ソ+漢数字”刻印
第三隧道呑口前の作業場跡(坑口向かって右手の藪の中に煉瓦断片が多数転がっている)や第三隧道吐口のポータル壁裏に見られる刻印。漢数字は二桁で「一二」や「二九」が見つかっている。これら煉瓦は厚さ70mm強の肉厚煉瓦の小口or長手に打刻されている。疏水の”ソ”とみて蹴上工場製品と推測することもできるし、滋賀県大津市で検出されている小判型+カナ+漢数字の系列とも見ることができる。琵琶湖疏水蹴上煉瓦工場は明治22年3月で操業を停止したはずで(大阪毎日新聞明治21年12月30日2面)、第三隧道も同年3月26日に竣工している(琵琶湖疏水要誌p.319)。工場稼働の末期に使用された印であるのかも知れない。
琵琶湖疏水蹴上煉瓦工場というと四角+”蹴”印や”○+第壱”、”○+第二”印がよく知られているが、ここに掲げる”ソ+漢数字”などそれ以外の刻印煉瓦も使用されており、実際膳所監獄が琵琶湖疏水工事に煉瓦を供給したとする新聞記事もある(東雲新聞明治21年9月22日)。カナ+漢数字刻印煉瓦が膳所監獄製である可能性も考慮したほうがよいようである。