○並形煉化石仕様書の件 明治三十四年十月二十六日 鉄作計乙第二〇〇七号(長官決定)
当局市街線高架鉄道工事用煉化石の義は特に品質新報色沢抗圧強給水量等の画一なるものを要し候に付該工事に要する煉化石仕様書の義別紙の通り御制定相成可然哉此段相伺候成
並煉化石仕様書
一並煉化石は品質、形状、色沢とも均一にして石片、土塊等の混合物なく又空隙、割目等を存ぜざる機械抜、焼過上等品たるべし
一寸法は長七寸四分、幅三寸六分、厚一寸九分を以て定寸とす
但し長さに於て二分以内幅及厚さに於て各一分以内の伸縮は之を許す
一重量は極めて乾燥したるものにして一箇六百三十匁以上たるべし
一三種の等級区別左の如し
一等品は 素質堅緻にして火度充分に透り角度正しく無瑕にして互に叩くときは金属を打つが如き音響を発し給水量は重量の六分の一より少く抗圧力(圧迫するとき亀裂等最初の破壊を来す力を云う以下同じ)は一平方尺に付五十噸以上の割合たるべし
二等品は 品質火度等は略ぼ一等品に等しと雖も角度少しく正しからざるもの又は使用上差支なき小瑕あるもの
但し給水量は重量の六分の一より少く抗圧強は四十五噸以上の割合たるべし
三等品は 品質火度とも一、二等品より劣るも給水量は重量の五分の一より少く抗圧強は三十五噸以上の割合たるべし
以上
M34.10.26 鉄作計乙第2007号。新永間市街線高架橋の建設のための仕様。7寸6分~7寸2分 × 3寸7分~3寸5分 × 2寸~1寸8分 と余裕を持たせてあるが、機械抜、焼過上等品という縛りがあった。M34時点で機械成形を採用していたのは日本煉瓦製造と金町製瓦、大阪の大阪窯業くらいじゃないだろうか?(機械抜かつ焼過なのか、機械抜または焼過なのか?)
この寸法はおそらく、9 x 4-1/2 x 2-1/4 ins.(厚2-1/4インチ)を芯として、東京形と監獄則煉瓦も当てはまるように設定している。短期間に大量の煉瓦を必要としたので精選するよりも寛容に傾いたものだろう。定寸の対厚比3.894/1.895は東海道線工事西部区間でも時折見られる。