猿島ビジターセンターの展示ケースの中にある一個。漢数字を□で囲った識別印だけが押されている。この系統の印が”瓦磚製造所”印とともに押されているものが水野信太郎『国内煉瓦刻印集成』に収録されている。
鉄道省用の3インチ煉瓦に”□+漢字”を打刻したものが西尾市街や東海道線遺構で見つかっており、ここではそれを西尾士族工場の使用印と推定してきた。実際に西尾市下町には同じ数字の転石がある。ただし西尾市転石は”三五”を四角で囲ったもので、かつ”五”は一画目を省略した俗字の五である。また転石印のほうが若干幅が広いように見える。要するに完全一致はしない。
展示品の表面には金雲母が大量に含まれ、ダウンライトの限られた光源の下でも顕著に輝いていた。この大量の雲母の含有は東洋組時代の煉瓦に顕著な特徴で、かつ西尾の製品ほど含有量が多いようである。この煉瓦も西尾分局製と見てよいと思われ、とすると東洋組時代から”□+漢数字”の識別印だけを押すパターンがあったということになる。