[Sec]津守煉瓦 六稜星 スライス

津守煉瓦の六稜星(中)刻印煉瓦を平と平行に割った。写真1枚目は刻印の打刻面。縁に特徴的な作業痕(Y線)がある(津守煉瓦は平両面に打刻されたものが多い)。またこの面に内部の白斑が露出している。

写真2枚目は割断面(刻印の打刻された側ではない側の割面)で、打刻平から反対側の平を”透視”し煉瓦中央の断面を見ていると考えていただきたい。

3枚目写真は同じ部位の裏側。もともとこの煉瓦はその面を下にした状態でアスファルト道路に転じていて、平全面が摩耗してこのようになっていた。写真は左右反転してあるので中央写真の”透視”を底まで延長した状態である。

中央断面では小口や長手の縁に沿って胎土が流動した形跡がある。中央部分も左右の流動が顕著である。小口と長手の流動は写真下側の隅角で連続しており、この角に押しこむように胎土を動かしたことが推測される。小口や長手の流動および角への押し込みは型枠内に粘土を貼り付けるようにして函型に成形したとみられる(その函に別の粘土塊を入れて左右方向に捺したのが中央の流動か)。写真下の隅と写真上の隅とで流動のしかたが違うのは手首や指の可動角度の違いによるものと思われる。

中央断面では流動による細い筋が目立つのに対し、底の流動は面積をもつ白斑となっている。煉瓦を小口方向に割断した時に見られる”凵”型の底がこれである。型枠の底(作業用小台)に押し付けて広げたためにこのようになっているとみられる。

以上の状態から察するに、型枠に粘土を貼り付けて函型を形成し、その中にさらに粘土を詰める→あふれた粘土をコビキで削り取り、撫で板で整形→型枠ごとひっくり返し裏面を整形→打刻という流れであったことが想像される。写真1の平に白斑が露出しているのも函型の縁や中央の充填をコビキで切断するために現れるのだろう。

平にそうした白斑の露出がある一方、長手や小口には全く露出していないのは注目に値する(これはこの煉瓦に限ったことでなく、白斑を有する煉瓦に普遍的に見られる特徴である。きれいに整えられたほうの平と長手小口は一様に赤く焼けているのにY線のある平にだけ白斑が露出していることが多い)。函型に形成する際、単純に粘土塊をなすりつけただけでは長手や小口にも白斑部が露出するはずである。白斑を露出させないようにする作業工程があったものと思われる。

例えば、よく乾燥し篩にかけ均一に混ぜ合わせた粘土粉を用意しておき、函型を形成する前に型枠内側にそれをまぶしておくか、粘土塊に厚くまぶして型枠に投入する等したものと推測される。整えられた平面(=函底側)はグラインダー等で研磨すると1mmも削らないうちに白斑が露出するし、構造物の長手小口も薄く剥がれた表皮の下に白斑が見えることが多い。

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