大阪新報 T12.8.12/煉瓦製造=投機事業

煉瓦は投機的事業
総ての工業界が一般経済界の消長とその軌を一にすべきは論を俟たざるも殊に煉瓦市価の昂低は最も迅速且甚だしきものにして例えば去る四十年の財界沸騰当時十六円の最高値を唱えしもの四十二年は僅かに九円に暴落し殆ど半額に近き市価を現出し亦昨年十四円台を往来せしもの昨今又々財界の銷沈に連れ十一円台に低落し居如く如何に其昂低の甚だしきを知べし随って同事業の経営は頗る至難を極め平凡真面目一方の経営にては到底成績を収むる能わず常に大勢を達観し悲境に狼狽せず慎重なる態度を要する一面に人意的市価昂上策とし反対に製造業者より内々買占を為し以て一般市価の昂騰を招致し景気回復を企画する必要もあり亦自己製造の煉瓦にて損失するも買占煉瓦にて反対に利潤を計上し得ることとなり要するに投機的性質を帯ぶる事業なれば一歩経営を誤らば財界の□潮季に悲境季の契約品を製造するという馬鹿を見常に損害を計上するの不幸に陥ることなしとせず現に煉瓦会社の大半が損失を免れざるに徴しその経営困難なるを想うべし

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