”×標”
和歌山県下で稀に見られる煉瓦刻印。アスタリスク“*”にも見えるが縦棒の一端が短く、斜め線の端が水平に切れているところに特徴がある。澪標の天辺を取り去ったような記号なので仮に”×標”とした(和歌山市街で検出したものは平裏打刻で、Y線を下に見た場合には上掲アイコンの如くになる)。
広川町広の旧戸田家住宅にこの刻印煉瓦が使われているという情報提供を頂いた。この建物は1924年(大正13)に建てられたとのことなので、当時からあるものであれば大正中後期に操業していた工場の使用印と考えられ、また現時点では検出例が和歌山県下に限られているので県下の工場のそれと推定される。該当するのは紀泉煉瓦(株)(T12~S7)、和歌山窯業(株)(T8~T12)、(合資)川口煉瓦製造所(T8~S5)など。紀泉煉瓦は三重丸+×を推定しており、川口煉瓦は社章が判明しているので、候補としては和歌山窯業(株)が第一になると思われる。
和歌山窯業は煉瓦・土管・瓦の製造販売、不動産業、土木材料の販売を目的として海草郡西和佐村大字岩橋1147に設立(官報 1920年04月21日)。岩橋には後に岩橋煉瓦が成立したが所在番地は1280であった。和歌山窯業の工場として稼働していた場所で独立したか。