赤坂川橋梁(M18.10竣工、9ft円形井筒採用)で採取した撥型異形煉瓦(写真右・上)。左・下は石ヶ瀬川橋梁(M24改築)で使用されていたとみられる9ft用撥型異形煉瓦”イー”である。厚さは56mm前後、撥先幅は118mm、撥元幅は80mm弱で、”イー”に対しては撥先幅が広く撥元幅が狭い。
要するに東海道線建設時の準規格とも後年の規格とも異なる形状をしている(故に初代橋脚に使用されていたものと推測したい)。ただし同所で採取した扇形異形煉瓦のひとつは東海道線建設時の”デー”に一致し、また大野煉瓦の井桁印に”シー”を添えたものも見つかっている(これについては複線化時の井筒から出胎したものと考えられなくはないが、川底に転じていたのは同じ平面形状・厚さの煉瓦ばかりで、ひとつの井筒の瓦礫のように見受けられる。仮にこれが複線化時の井筒のものだとしても撥形異形は系列を異にしていることは間違いない。なお同所では普通煉瓦に打刻した大野煉瓦製品も検出されており井桁印使用がM18頃から始まっていたことになる)。後年の”E”に相当する撥形異形煉瓦だけが大きかったことになり、厚さも東海道線時代には採用されなかった2-1/4インチ規格であったことになる。M29の規格が成立するまでに様々な試行錯誤があったことを教えてくれる一石である。