京都鉄道時代の拱渠。楽々荘の煉瓦=京都鉄道社章印煉瓦=(推)南桑煉瓦製品が対厚比3.97/1.89で監獄則系なのに対し、この暗渠の煉瓦は3.88/1.82で該当規格なしとなる(各辺平均値で見ると東京型が最も近い。厚さは55.3mm/59.0mmと1分以上異なり、後者は東京型と見るべきと思われる)。ほぼ同じ煉瓦が採用されている東隣の同型の拱渠では旭商社の識別印とみられる”ハ”を検出しているので旭商社の製品が大半を占めるものと想像される。
南桑煉瓦は京都鉄道との間で煉瓦購買の契約を締結するよりも前から煉瓦製造を始めていて、京都鉄道の提示した煉瓦規格に合致しないことが契約後に発覚し、それが原因となって契約を解除するのしないのの騒動に発展した(結局は契約通り300万個余りを納入。ただし南桑が製造したのは70万個前後で、残りは他工場の製品を購入し代納した)。楽々荘の京都鉄道社章印と実際に鉄道構造物に使われた煉瓦の規格が異なるのはその辺りの実情を反映しているのかも知れない。