煉化石示様書
本署淀川改良工事に於て使用すべき煉化石は左の各項に該当するものに限る。
1.形状及面 形状は規矩正しくて各個不同あるべからざるは勿論(特別製を要するものは此限りにあらず)表裏、前後、左右の相対する面は各々並行し其縁端は直線なるべく又相接する処の両面間の角度は正角なるを要す。各面共平にして凸凹あるべからざると雖も亦焼過等の為め滑に失するはモルター付着に適せざるを以て製造上相当の注意をなすべし。
2.品質 質は堅固緻密にして疎密不同若くは斑紋、裂目、汽泡等なく小石、貝殻、殊に石灰は小片だに混ずることなく之を打てば金属の如き清音を発するものたるべし。
3.吸水量 吸水量は煉化重量の10分の1焼過煉化にありては15分の1を越ゆるべからず予め其検定は左の方法によるものとす。試験用煉化石7個及至10個を選び克く之を乾燥したる後大気中に於て各別に之を秤量し次で水中に浸し44時間を経て復び之を採り出し4時間大気中に晒し表面の水分の全く蒸発し去るを待ってはじめて投水前の如く各別に秤量し重量7個の平均重量を採るものとす。
4.比重 1.9若しくは1.9以上のものたるべし。
5.耐圧力 煉瓦石の半枚を克く平滑に磨き上げ金属製の厚き板の間に横さまに之を挾み1平方吋に対し1,000封度の比率を以て圧迫力を加え異常を呈せざるものとす。
6.寸法 長、自7寸4分、至7寸6分 幅、自3寸5分、3寸6分、厚、自1寸9分、至2寸を以て規定の寸法とす。
7.煉化石は機械製品に限る。
(『淀川百年史』p.435)
土木工事における煉瓦仕様の例として。最後に「機械製品に限る」とあってほとんど大阪窯業のための仕様書のようなもの(実際大阪窯業が納入した〔p.434〕。この時期に機械成形で製造していたのは関西では大阪窯業しかなかった。関東でも日本煉瓦製造と金町製瓦くらいじゃないか)。
瀬田洗堰には並焼、焼過の2種、異形4種を使用し、M34.12起工、左半分本体工は基礎コンクリート工終了と同時に台石据付。そして煉瓦積み。M36.9.完成し通水開始。なので大阪窯業の機械成形製品の使用としては比較的早い。右半分M36.5.着工M37.7本体工終了、M37.11通水開始。以上p.434
寸法が最後のほうにあるのはそれほど重視されていなかった証拠。品質で「斑紋」なしが求められているのも注目したい。どのみち機械成形なら斑紋も生じないだろうが。