
五稜星(塔本煉瓦?)
5つの稜をもつ、いわゆる星形の刻印。大阪府下淀川以南で比較的頻繁に見られる。大阪府和泉市の旧府神社壁に堺煉瓦・日本煉瓦との共使いが確認されており、また分布の中心が堺市近辺にあるように思われる。特に堺市堀上町(旧八田荘村大字堀上)にはこの刻印煉瓦だけを使って築かれた見事な煉瓦ワークの壁がある。隣の大字八田で操業していた塔本煉瓦商会の製品ではないかと推定。(該壁は昭和3年創業の堺煉瓦製造の所在番地にある。異形煉瓦の使い方、構造は丹治煉瓦社屋の近くに残るのものによく似ている)
由良要塞生石山第四砲台(明治22年3月着工・同23年4月竣工)でも星形刻印は見つかっているが、稜が細く、2つ隣の稜の辺が並行でないという違いがある。同じ星形と見れないことはないが、明治22年以降継続的に操業した工場で刻印が推定できていないものは少ない。
なお淀川以北での検出例は極端に少なく、茨木市上中条と大阪市東淀川区上新庄でそれぞれ1例のみ。他府県では未だ見つけられていない。
堺市堀上町の煉瓦壁。浅いライズのアーチ窓に透かし積みで煉瓦をはめる。笠石や柱頭には異形煉瓦を使用(すべて★刻印がある)
丹治煉瓦社屋の一筋南にある民家の壁。当初は工場の一部か関係者の居宅であったものと思われる。堀上町の壁に見られるような丸窓はないが、雰囲気はよく似ている(と思う。2つ並べてみると違いのほうが目立つかも知れぬ)。